心の錨

11月12日の日経新聞の春秋(コラム)。「23年もの間、家族同様だったパンダのぬいぐるみを、はるばる山梨県の富士山の麓まで旅に出した。長年の垢(あか)ならぬ手垢(てあか)、食べこぼし、ほこりその他諸々の汚れを落とすため専門のクリーニング店に委ねたのだ。診断の結果、施術、療養に3週間を要すると連絡がきた。家に迎えてから、こんなに長く離れたことは一度もない。粗雑に扱われていないか、顔つきが変わっていたらどうしよう。心落ち着かない日々を過ごした。ようやく「ご帰宅」の案内メールが届く。メッセージには「ぎゅ〜っと抱きしめてあげて下さいませ」という店員の温かい言葉。その通りにしたのは言うまでもない。こんなことを書くと「大の大人がキモい」と変人扱いされそうだ。だが、ぬいぐるみを愛し癒やしを得ている人々は、決して少数派ではない、と少し前に本紙社会面の記事で知った。大阪にある「病院」の予約は数年待ちで、依頼者の大半が30〜50代だという。ある識者はぬいぐるみを現代の「心の錨(いかり)」だと表現していた。ジョブ型雇用にリスキリング。年齢とキャリアを重ねても、とどまることなく前へ前へと変化を求められる社会。ときに疲れ、漂流しそうになる気持ちをしっかりつなぎとめてくれる存在、という趣旨の説に思わずうなずいた。白と黒のコントラストを取りもどし、帰ってきた我が相棒。変わらぬたたずまいにホッとする」。

現代の自由民主主義社会は、資本主義という「宗教」が隅々までいきわたり、自分を含めてほとんどのものが商品であり、効率・競争が求められる。まさに、「とどまることなく前へ前へと変化を求められる社会」だ。資本主義で社会は全体としては発展するが、結構個人としてはしんどいところ。一昔前なら、心のケアーは宗教の出番だったかもしれないが、昨今ぬいぐるみが「心の錨」になることもあるようだ。

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