人間を深く理解するには、①他の動物と比べての人間の特徴とその背景、②現代文明社会が作った環境(含む、個人主義、貨幣経済)と脳の想定環境のギャップ(←脳が新たな環境に適応するには万単位の年月が必要ながら、文明が農耕開始でテイクオフしてから1.2万年間しか経過していない)を理解することが必要だ。
本日のお題は人間の「テイクオフ」。人間の先祖は、アフリカの乾燥化に伴い、森林の縮小・サバンナ(草原)の拡大を背景に森林での生活からサバンナでの生活へ、生活環境を変えざるを得なかったことを契機に700-600万年前にデフェンシブに直立二足歩行が始まり、下記のような展開を生んだのだろう。
→ 脳の巨大化・知能 頭部が直立した胴体の直上に位置することにより頭部の姿勢が極めて安定し、他の四足歩行の動物と比べ、また、体重に比して巨大な脳容積を得ることができるようになり、その後進化して全動物中最も高い知能を得た(人間は大きな脳以外に生物的な武器を一切もたない)。その後の進化の過程で、より大きな脳がコミュニケーション、チームワーク、イノベーションを可能にしていった。
→ 腕の利用拡大(運搬・投擲) 前脚=腕が歩行から解放され、重量物の運搬能力を得た。棒・骨・石を手に取り、それを武器にしたり、小動物・木の実・獲物を扱う道具として使うようになった。また、投擲(石投げ)という他の動物にはない能力も獲得。その後の進化の過程で、手先を使った各種イノベーションを可能にしていった。大きくなった脳でより安全で便利な生活を想像して、その実現のために道具に工夫を重ねた。結果として、石器、縫い針、木船、土器、釣り針、車輪、弓矢、紙など、さまざまな道具を考案した。つまり、人間は他の動物や人間と争うために、体格や体力に依存せず、道具に依存するようになった。
→ オスメス協力 産道が小さくなりより未熟な状態で赤ちゃんが生まれるようになり、さらに直立二足歩行という高度な身体能力が求められる歩行方法は習得するに長期間の訓練が必要であり、かつ、脳の巨大化により養育期間が長期化し、オスとメスが共同してしっかり子育てをする必要性が発生(哺乳類でオスとメスが一緒に暮らすのは数%しかいない。メスの繁殖効率が非常に良いためオスである父親が何かをする必要がない)。オスとメスのつがい関係を良好に維持するために性行動も利用るようになった(生殖目的でなくコミュニケーション目的に性行動。メスが排卵期と無関係に性行動出来るというのは人間だけ)。食うか食われるかの時代、メスをめぐるオス同士の争いを少なくして、そのエネルギーを子育てに使った/使わるざるを得なかったとも言える。
→ 競争より協力・チームワーク 大ききな脳以外に生物的な武器を一切もたない人間がオープンスペースの草原(サバンナ)で生存していくには個体間競争している場合ではなく、個体間協力が生存のカギだと気づいた個体が生き残っていった。血縁以外の交流関係を持つのは人間だけだ。
→ 共通認識 個体間競争の激しい生活では知識が力であり、貴重な個人的情報を共有することはありえなかったが、協力・チームワークが始まると、共通認識を持つ方が生存に有利になった。実際、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの視線の方向を追うのは容易ではないが、人間の強膜(眼球の外側を覆う乳白色の丈夫な膜)は進化の末に白くなり視線の向きが他者にわかるように進化した(人間が視線の向きを明らにする事実は、自分が注意を惹かれているものを隠くすよりも、相手に伝える方が他者から得るものが多くなったという証拠)。例えば、獲物を誰より早く見つけたとしても、それを仲間にも知らせ、一緒に協力して捕まえるようになったのだろう。
→ 共同繁殖(生活) 養育においても他のつがいと協力するようになった。体毛が無くなり赤ちゃんがお母さんにつかまって常時移動することができなくなった(どこかに置く必要性※。一カ所により長い間留まるようになった)。また、生活が複雑していく中で、色々なことを親だけで教えるのは難しくなり、複数のつがいが一緒に集まって共同体をつくって暮らすようになった。加えて、食うか食われるかの時代、実の両親が生きていている可能性も高くなく、共同体内で自分の家族以外に色々なつながりを持つことが重要になっていった。 (※その結果、人間の母子は、物理的に離れることが多くなり、その環境下、双方が双方の心を想像するようになった。言い換えれば、物理的/身体的な感覚だけでなく脳/言葉で他者とつながれるようになった。後述する他者との心の共有の下地となったと思われる。また、自他区分を通じて自己意識・自我の確立につながった。なお、人間以外の動物に厳密な/「深い」自己意識・自我はないと言われる。)
→ 心を共有 さらに脳が大きくなって、自意識や因果関係理解が進んでいくと、どこかの時点で他者と心を共有することができるようになった(さらにそのニーズが脳を大きくした)。心の共有は人間の特徴。共感力を身に着け、自分自身の経験や置かれている状態以外に、他者の心の状態(感情や目的、意図、知識、信念、志向、疑念、推測等の思考)を直観的に推測できるようになり、自分もそういう状態に置かれた時にどう感じるかを想像できるようになった(人が映画に没入していることを想像するとイメージしやすい)。共感力をベースに、相手に耳を傾け、理解しようとする姿勢が、信頼を築く。いろいろな人と信頼関係を結ぶことができるのは人間だけだ。心の共有を通じて、理解と信頼が(フラットな)「人間関係」を作っていった(→人間は社会的動物。集団を形成する動物は存在するが、人間の集団は自覚的・意識的集団)。脳の容量が500ccの時代の集団の最大サイズは15人。150万年前には脳の容量が600ccに増えたので、30-50人の集団に。そして60万年前に脳の容量は1500ccに達し、人間は最大150人の集団を形成可能に。この頃から現代に至るまで脳の容量は変わっておらず、今の人間も実は「150人の集団」のための脳しか持ち合わせていないと言われている。
→ ノウハウ・文化継承 知識を得て、それを皆でまた世代を超えて共有・改訂していった。どこかで誰かが新しい手法を発見すると、みんなに伝わる。次の世代はそこから出発すればいいので、いつでもゼロからやり直す必要はない(チンパンジーは誰かが何か新しい手法を発見しても、その個体で止まってしまう。他者の行動を見て、自分もやってみる社会学習はするが、教えたり、聞いたりはしない。したがって知識の蓄積が非常に緩やか)。
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→ 180-80万年前から火を利用するようになった。火のひとつの利用方法が調理で、加熱して胃腸への負担の少ない形で食事ができるようになり、脳によりエネルギーが使えるようになった。また、火食により消化器官が小さくなり主直2足歩行が完成したとも言われる。これらの要因で増強されやすくなった脳を使ってさらに記憶力や想像力がアップし、増大した想像活動がさらに脳を大きくした。
→ 脳の巨大化・共同繁殖(生活)・皆の心が分かりあうこと(共感) → 言語 ホモ・サピエンスが世界に拡散する前、10万年から8万年前に最初の言語が出現した。→ 知識共有・蓄積をより効率的に行えるようになった(共感→言語:私が何を知っていて、何を考えて、何を感じているかをあなたにも知ってほしい、と思わないと、言語は生まれない。人間以外の動物にはそういう言語はない)。また、人間は親密の度合いを感覚できるだけでなく、実際に会ったことがなくても誰かに聞くことで、母方の実家のおじさんとか、いとことか、自分との関係を想像でき、愛着を持つことができる。これは他の動物にはない人間のすごいところで、関係性に名前を付けて、系図として認識できるのは(概念を理解できるのは)人間だけである(7万年前に起こったとされる認知革命)※。→ 言語に加えて(心を満たすものとして)音楽・絵画・宗教を生んだ。(※目に見えないコンセプト/概念を想像できるようになり、向上したコミュニケーション能力でコミュニティー内で共有した。神話・宗教、国、貨幣など。有史前ホモサピエンスは、最大150人のコミュニティーで生活していたが、この認知革命のおかげで(特に貨幣の力は強大で)はるかに大きな集団が形成されるようになっていった。)
→ 想像力 ヒト科-ヒト属-ヒト種(ホモ・サピエンス)とサル(←目の前の世界に生きている)の違いは、想像力。想像力とは「そこに無いものを知覚する能力」のこと。これが人間を人間たらしめてたと言える。人間はこの力を使うことで、未来、時間概念、自己の将来の死、他者の心⇔自己意識・自我(この2つはセットで獲得したと思われる)、より安全で便利な生活、各種抽象概念を理解できるようになった。人類史を概観すれば、この想像力の増大が1.2万年前に臨界点に達して(行動力の源にあるのは想像力の蓄積)、農耕開始を契機にそれ以降の垂直的な文明の発展につながった。
【今日の1日/雨】6時半起床。家事一般。情報by新聞・TV。サイト運営。SNS受発信。朝食。ガソリンスタンド-昼食-農園-ゴルフ練習。阪神タイガース観戦。夕食。Youtube。就寝。(一言)人類のテイクオフを概観すると、山極壽一氏が言う「認知革命の前に共感革命」もわかる気がする。(実際の物語はもっと複雑と思われるがシンプルに言おうと)人と人が共感革命によって結び付き、そのコミュニケーションの高度化の中で言語が生まれ、その結果としてユヴァル・ノア・ハラリ氏が言う認知革命(人間は、実在しているものから抽象的な概念まで共有することができる)がある。
【INPUT】(日経新聞) (WSJ) (YouTube)(読書)夢をかなえるマンダラチャート
【OUTPUT】マンダラチャート維持。