人類史の肝

<脳の拡大> 人は脳を拡大し、①過去・未来の時間軸を持つに至り、ネガティブな過去の記憶や将来の予測をベースにリスク感覚・生存確率を高め、一方で、②付き合える人の数を増やして150人(提唱した人の名にちなんでダンバー数と言われる)程度との共同生活を可能にして生存確率を高めた(数十万年前)。その後、数万年前に言語を使うようになり※、脳の大きさに基づく150人を超えた規模の共同生活が可能になった。さらに、数千年前に貨幣を使うようになり、さらに大きな規模の共同生活が可能になった。

※ 認知革命:言語技能の獲得による意思伝達能力の向上。この変化により、虚構を共有する能力や、柔軟な協力組織力を獲得し、食物連鎖の頂点に立った。

<脳→言語> 脳の拡大により、①人は三項関係(自己と他者とものの3者間の関係を指す。自己と他者または自己とものとの2者間の閉じられた関係を指す二項関係と対比される)を理解し、互いの心の中に描かれている思い、意図、欲求、認識を共有すること(相互理解)ができるようになった。また、②人の目には白目があり、白目があるおかげで、少し間をあけて向き合うと、目の微細な動きを捉えられ、そこから相手の気持ちを読むことが可能になった(人は、自分の目の動きを自分では調節できないので、正直な気持ちが目に表れる)と言われる。①相互理解と②共感する機能が、言語獲得によりそれらをより有効に行えるようになった。結果として、言語により人は、脳の拡大により得た150人(の共同生活)の壁を越えた。

<言語→貨幣> 共同生活は見方を変えれば分業生活である。ただ、物々交換やサービスの交換で共同生活をしていたときには、望むものを得るには、色々な社会関係の中で相手を見つけ交渉しなければならなかった。交換の内容も一律に決まっているわけではないので、交換する人どうしの社会的関係次第であった。しかし、貨幣を使うことによって、貨幣は抽象的な価値を表しているから、話がずっと簡単になった。1,000 円払う人が欲しい物と 1,000 円もらう人が欲しい物は一致していなくてもかまわなくなった。まったく違う欲求を持った2人が、特に社会的関係を持たなくても、1,000 円を介して相互に満足できるようになった。脳の拡大により得た150人の壁を言語により超え、さらに、貨幣によってさらに拡大した。

<遺伝子継承→文化継承> 共同生活は文化を育んだ。文化は、遺伝子以外での知識・知恵・技能等を継承/更新する。また、言語・貨幣導入による共同生活の規模拡大は、分業(多能工的)→専業(単能工的)を推進することになった。そして、貨幣経済のもとで人々が分業すると、大変効率よく事が進むのでやがて科学技術が発展した。その結果、人々が生きていくために、濃厚な社会関係を必須とする状況がどんどん減っていった。物々交換やサービスの交換で共同生活をしていたときには、よくも悪くも、人間は社会関係のネットワークの中に入っていなければ生きられなかったが、貨幣経済の中では貨幣を稼ぐ手段さえあれば、自分では他のことは何もできなくても、最低限の人付き合いしかなくても生きていけるようになった。昨今でも電話→メールの流れの中で、濃密な社会関係はさらに必要なくなった。

<関係希薄化> 脳を拡大し、三項関係を認識し、他者の心に共感し、ものを交換し、共同作業をすることができるようになり、言い換えれば関係の「濃厚化」で、人間は食物連鎖のトップに向けてテイクオフしたものの、その後の言語・貨幣・科学技術を梃子にした共同体の巨大化で生まれたものは、(文化というものでざっくりと包み込んでいるが、)逆説的ながら個々の関係の「希薄化」だ。つまり、人類のスタートポイントが個々の関係の「濃厚化」であった一方で、現在、人間疎外、生活の空洞化、社会関係の希薄化、地域コミュニティの崩壊、社会的コミュニケーションの不足といった関係の「希薄化」という逆悦的課題が発生中ということだ。言い換えれば、個の関係性で言えば、人は「小さく密」な環境でテイクオフしたが、気が付いてみると「大きく薄」い環境になっていると言うこと。

<課題> 「大きく薄」い環境に向かう中、日本は文化の力が強く(←世界が注目!?)、一定のまとまり感があるものの、(資本主義が生む大きな経済格差に無策な場合)昨今「分断」が叫ばれる国が増えた。また、人間は共同生活(←脳拡大とともに人類を食物連鎖上位に押し上げた要因)を後押しするために、感謝する心に幸福ホルモンが出るようになっており(=共同生活に積極的なDNAが生き残ってきた)、「大きく薄」い環境では、それがあまり機能しない問題がある(幸福度=ウェルビーイング度が上がらない)。したがって、例えば、金銭を介する関係であっても、当たり前とせず感謝の心を持つことや、積極的に利他的な的な行動をすべきと思われる。

【今日の1日/雨】4時半起床。家事一般。情報by新聞・TV。サイト運営。SNS受発信。ブログ書き。朝食。英国年金保険料支払。リノベ案件対応(含む資金繰り)。昼食。大相撲観戦。夕食。就寝。 (一言)このブログに、火の利用、農耕革命、産業革命による生産力増強、および、資本主義、情報革命による効率性増強を加味すれば、一定レベルの人類史概観が出来上がる!?

【INPUT】(日経新聞) (WSJ) (YouTube)(読書)共感革命 社交する人類の進化と未来 (河出新書) Kindle版 山極壽一 著 <再読中>

【OUTPUT】マンダラチャートを維持。

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