お金との付き合い

老後、お金が余る?

老後のお金について考えるとき、世の中ではたいてい「足りるか」が問題になる。何才まで生きるかわからない。医療費や介護費もかかる。インフレもある。だから、できるだけ資産を減らさない方が安心だ。私も長い間、基本的にはその発想で生きてきた。ところが、自分の65才以降の家計を改めて数字で眺めてみると、少し違う問題が見えてきた。夫婦の年金収入は、時期によって違うが、おおむねそこそこある。基礎生活費はカバーされそうだ。、もちろん、税金や社会保険、医療・介護、物価上昇などを考えれば、こんなに単純ではない。それでも大きな構造は変わらない。普通に生活しているだけなら、資産を取り崩さなくてもよい可能性が高い。ここで、少し困ったことが起きる。老後に備えて蓄えてきた資産を、老後になっても使わないのである。

年金を「1億円+の資産」と考えてみた

試しに、夫婦の将来の年金を現在価値に換算してみた。男女それぞれの死亡確率を織り込み、私が先に亡くなった場合の妻の遺族年金も考える。割引率を3%程度とすると、ざっくり1億円+になった。数字としては面白い。しかし、同時に思った。これは少し扱いにくい数字だ。1億円+を銀行口座に持っているわけではない。売却できない。一括して使えない。そのまま相続もできない。生きている間だけ、毎年お金を生み出す。だから年金は、「資産」と考えるより、生活費を毎年消してくれる装置と考えた方が実感に近い。そう考えると、今持っている金融資産や不動産の意味が変わってくる。

資産は何のためにあるのか

現役時代のお金には、かなり明確な目的があった。住宅。教育。老後。万一への備え。つまり、「未来の不安に備えるためのストック」という性格が強かった。ところが、基礎生活費が年金で賄えるなら、退職後に保有している資産は、少しずつその役割を失っていく。それでも人間は、なかなか使えない。資産残高が減ると、なんとなく不安になる。長年、増える=良いこと、減る=悪いことという世界で生きてきたからだろう。しかし、64才になった今、本当に希少なのは何だろう。お金だろうか。最近は、そうではないように感じ始めた。

お金より「元気に動ける時間」の方が希少になる

私は今、東京と箱根を行き来し、ときどきシンガポールへ行く。ゴルフをする。歩く。ヨガをする。ジムへ行く。料理をする。人と会う。そして文章を書く。最近は、さらに「変化」や「非日常」を生活に入れたいと思うようになった。ホテルやリゾート会員権などに目が向き始めたのも、その延長なのだと思う。考えてみれば、お金を経験に変えるにも身体が必要だ。旅行するには歩けなければならない。知らない土地へ行くには好奇心が必要だ。人に会うには気力がいる。新しいことを始めるには、環境変化に対応する力もいる。80才になって1億円持っていても、64才の今と同じように使えるとは限らない。つまり人生後半では、お金の希少性は下がり、元気に動ける時間の希少性が上がっていく。これはかなり大きな逆転だと思う。

「老後資金」から「人生充実資金」へ

そこで、お金をふたつに分けて考えてみる。一つは、生活維持のお金。食べる。住む。医療を受ける。日常生活を維持する。これは、基本的には年金で賄う。もうひとつは、人生を充実させるお金。旅行する。環境を変える。身体を整える。家族や孫に使う。人と会う。新しい経験をする。何かを創る。こちらには、蓄えてきた資産を使えばいい。そう考えると、「資産を取り崩す」という言葉さえ少し違って見える。取り崩すのではない。お金を、身体・経験・関係・時間へ変換する。お金が消えるのではなく、形を変えているのである。

貯める能力から、使う能力へ

現役時代には、稼ぐ能力、貯める能力、増やす能力が重要だった。しかし人生後半では、別の能力が必要なのかもしれない。上手に使う能力である。しかも、単なる浪費ではない。自分の状態がよくなるものに使う。身体が動くようになるものに使う。人との関係が豊かになるものに使う。世界との接点が増えるものに使う。自分が更新されるものに使う。そういう使い方なら、お金は減っても、人生全体では何かが増えている。むしろ問題は、資産を守り続けた結果、お金は残ったが、使える時間と身体がなくなったという状態なのかもしれない。64才。どうやら私の家計では、「老後のお金が足りるか」という問題はかなり小さくなってきた。代わって浮上してきたのは、余るお金を、どう人生へ戻していくか。これはこれで、なかなか難しい。ただ、少なくとも方向は見えてきた。これから必要なのは、さらに上手に貯めることではない。お金を、元気な時間に変えること。私の「お金のOS」も、そろそろ更新する時期なのだと思う。

【今日の1日】5時起床。家事一般。新聞+サイト運営。白湯+オイルうがい+ピラティス。朝食。小田原駅-天山湯治郷(温泉・昼食・昼寝・喫茶)-買物x2-知人宅-ゴミ捨て。料理。夕食。振り返り。就寝。(一言) 

【INPUT】(日経新聞) (WSJ) (YouTube)(読書)「卒サラ@還暦 物語― 人間の設計思想を再発見する物語」ドラフト

【OUTPUT】マンダラチャート維持

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