「足るを知る」は、残高の問題ではなかった!
最近、お金について少し不思議な感覚がある。お金は貯めるものではなく、循環させるための道具なのではないか。そう考えるようになってから、お金が「足りない」のではなく、むしろ「余っている」と感じることが増えてきた。もちろん、実際の資産額が突然増えたわけではない。変わったのは、お金の量ではなく、お金を見る自分の側だった。
貯めることには終点がない
現役時代、お金は基本的に「貯めるもの」だった。働いて、収入を得る。生活費を払い、残ったお金を貯める。余裕ができれば運用する。これはごく普通の行動だと思う。問題は、「いくらあれば十分なのか」がわかりにくいことである。1,000万円あれば2,000万円。2,000万円あれば3,000万円。老後にはいくら必要なのか。病気になったらどうする。長生きしたらどうする。インフレになったらどうする。未来はいくらでも不確実性をつくり出せる。だから、貯める → 安心するという構図には、実は終点がない。お金を増やすことが安心の条件になっている限り、「もう十分」という地点にはなかなか到達できない。
「何のためのお金か」と考えてみる
ところが、お金を「循環の道具」と考えると、問いが変わる。いくら持っているか。ではなく、何のために、どれだけ必要なのか。
生活を維持するため。
住む場所を整えるため。
身体を整えるため。
家族との時間をつくるため。
旅をするため。
人と会うため。
学ぶため。
面白いことをするため。
そして、次の世代へ渡すため。
こうして考えてみると、お金にはそれぞれ行き先がある。お金は金庫の中に積み上げることによって役割を果たすのではない。生活の中を巡ることで役割を果たす。そう考えると、不思議なことが起きる。必要なお金の輪郭が見えてくるのである。そして、その輪郭を超えた部分について、「あれ、これは余っているのではないか」と思えるようになる。
「足る」は金額では決まらない
ここで、ようやく「足るを知る」という言葉が腑に落ちてきた。以前の私は、この言葉をどこか精神論として受け取っていた。
欲張るな。
贅沢するな。
今あるもので満足しなさい。
そんな戒めに近いものだと思っていた。しかし、少し違うのかもしれない。「足る」とは、自分に必要な循環の大きさがわかることではないか。生活には、一定のお金が必要だ。しかし必要なのは残高そのものではない。食べる。住む。動く。休む。人とつながる。楽しむ。次の世代へつなぐ。そうした生活の循環を支えられればいい。循環に必要な量が見えれば、「十分」という地点も見えてくる。逆に、お金を増やすこと自体が目的になれば、「十分」は永遠にやってこない。
直線から循環へ
これは、卒サラしてから感じてきた「直線から循環へ」という変化ともつながっている。会社員時代は、多くのものが直線的だった。
目標を決める。
行動する。
成果を出す。
さらに高い目標を設定する。
お金も同じだった。稼ぐ → 貯める → 増やす → さらに増やす。直線には、その先がある。だから走り続けることになる。ところが生活は、本来もっと循環的である。食べて、動いて、休んで、また朝を迎える。人と会い、話し、離れ、また会う。季節が巡り、身体も変化していく。お金も、この循環の中に置いてしまえばいい。お金 → 生活 → 良い状態 → 経験・関係・活動 → 生活へ。お金は人生のゴールではない。生命活動を支える媒介物のひとつにすぎない。
貯めるから、巡らせるへ
もちろん、貯蓄は必要である。将来への備えも必要だ。「循環させる」といって、使い切ればいいという話ではない。蓄えること自体も循環の一部なのだと思う。冬に備えて食料を蓄えるように、未来の生活を支えるために一定のお金を蓄えておく。大切なのは、蓄えることを自己目的化しないことなのだろう。貯蓄は循環を止めるためではなく、将来の循環を安定させるためにある。そう考えると、「もっと貯めなければ」から、「このお金を、どう巡らせれば自分たちの生活がよく回るだろう」へと問いが変わる。これはかなり大きな違いである。
足るを知る
「足るを知る」とは、欲望を無理やり抑えることではないのかもしれない。自分の生活をよく見て、
何が必要なのか。
何を大切にしたいのか。
どんな状態で生きていたいのか。
その輪郭が見えてくること。すると、お金の必要量にも輪郭が生まれる。そして初めて、「これで足りる」と言える。面白い。お金の残高は昨日とほとんど変わっていない。それなのに、お金を「貯めるもの」から「循環させる道具」に置き直しただけで、余っているように感じる。足るを知るとは、所有する量を減らすことでも、欲望を我慢することでもなかった。
自分に必要な循環の大きさを知ることだったのかもしれない。貨幣には満腹中枢がない。だから生命の循環の中に戻さなければ、「足る」は永遠にやってこない。
【今日の1日】5時起床。家事一般。新聞+サイト運営。白湯+オイルうがい+ピラティス。朝食。ゴミ捨て-ガソリンスタンド-ヨガ-昼食(うどん)-ジム-買物。夕食。阪神タイガース観戦。就寝。(一言)
【INPUT】(日経新聞) (WSJ) (YouTube)(読書)「卒サラ@還暦 物語― 人間の設計思想を再発見する物語」ドラフト
【OUTPUT】マンダラチャート維持
